ピアキャスト偉人伝 殺し愛 その6

その5から

 殺し愛が夢を見る猶予は、瞬く間にその半分を失った。
殺し愛は祖母から金を借りたその足で現金を持ったままロバート、マスターと共に酒席に赴き
そして泥酔。
酒を飲み始めてからの記憶は全く無く、
酔いが醒めた時、祖母から借りた金は半分になっていたのである。


 殺し愛が配信を始め金を失ったと報告を受けたリスナーは、
再度心当たりのある場所を徹底的に探すと共に警察に届けるように薦めた。
しかし殺し愛は
「無くなった金の事をいつまでも探しても仕方ないけん、
今やるべきことを優先せんといかん。」
と言い美容室のチラシ作りを続けた。
 
 殺し愛は肩を落とし上半身をゆすりながら、
チラシの間に悲しみを織り込み、悲しみを体の外に出そうとし続けたが
折られたチラシの量が増えるごとに、自分が失ったものの大きさをまた自覚し、
心が癒される事は無かった。
「オラに現金を分けてくれ。現金玉」
普段なら何のことは無いソフトークが読み上げるこのただのネタレスも、
今の殺し愛にとっては特別なものだった。
「798、ありがとう。
少し元気が出てきた。」
そして殺し愛自身のネタレスに対する感謝の言葉が、更に殺し愛の感情を高ぶらせた。
殺し愛は嗚咽をかみ殺すウーという声を応接室に響き渡らせると
「ありがたい・・・
涙が出るほどありがたい。」
と言い泣き伏した。
 一旦感情を吐き出した殺し愛は
「やっぱり人間泣くと元気が出るっちゃね。」
と言い一時的に精神に安定を取り戻した。

 平静を取り戻し殺し愛は自分が空腹感を抱いている事に気付き、
ご飯を食べる事にした。
殺し愛は飯をどんぶりに盛りながら、再び状況と自分が金を探さない理由を話し始めた。
「あのお金は農業と美容室にいろんな面白いものを入れるようにしとったったい。
そしたら、美容室が盛り立てられるやろうとね。
だから自分はお金を探すよりもチラシの作成とかそっちの方ば優先するったい。
やるべき事はお金を探す事じゃなく、こうやってチラシを作ったりする事を優先するべきやし。」
 自らの言葉で客観的な状況を再認識した殺し合いは、再び感情が高まり
顔を俯かせ、「チキショウ、チキショウ・・・」と呟いた。
そして「それでも・・計画が・・・」
と言うと目からは涙、鼻からは鼻汁を出し咽び泣いた。
 殺し合いは自分の涙がふりかかった飯を頬張りながら、
「目の前の無くなった金の事を考えても仕方が無い。
そんなセンスの無いことではいかんけんね。
未来のために今出来る事をやる。」
と何度も繰り返した。
 それはある種異常な論理展開だったが、
殺し愛が精神の平静を保つにはこの理屈を自分に言い聞かせるほか無いという事を
この感情の変遷を通して確認したリスナーは、それ以上かける言葉が無かった。

  殺し愛は30歳になるまで酒を飲んだ事が無かった。
それは殺し愛が人付き合いを避け、酒を飲む機会を避けてきたからである。
しかし、美容室に居候し、人付き合いの中で自分の立場を確保するようになった今、
酒を飲む機会は度々訪れるようになった。
 殺し愛自身は自身の酒の強さについて「自分は物凄く飲めるっちゃね」と言っていた。
しかし酒にまつわるトラブルは、客の車で事故を起こした件に続き
今回が二回目である。
 この状況から見て、殺し愛は決して酒に強いとは言えないと考えられる。
しかし殺し愛はその事を今回の事件でも自覚できなかった。
周りの者も殺し愛にその事を指摘しなかった。
 そしてこの不幸な状況が、再び殺し愛をトラブルに導くのである。

その7へ続く

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Private comment

No title

更新まだー?

No title

これのせいで殺し愛の動画漁ってしまった。。
いまはどうなってるんだ?

No title

この辺り見ることできなかったので続きお願いします
気が付いたら消息不明になってるんだもんなぁ

No title

続き待ってます

No title

文才ありますね 続きはもうないかな
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